近年、話題となっているGLP-1受容体作動薬「マンジャロ(tirzepatide)」は、週1回の注射で食欲を抑え、効果的に体重を減らすことができる医療痩身薬と
して注目されています。しかし、「食事はあまり気にしなくてもいい」と誤解されがちです。実際には、食事の内容とタイミングを工夫することで、マンジャロの効果を最大限に高めることが可能です。
この記事では、科学的根拠に基づいた「マンジャロ中におすすめの食事内容」「避けるべき食べ方」「よくある落とし穴と対策」を、臨床医の視点から詳しく解説します。
◆マンジャロ中に積極的に摂りたい食品群
GLP-1製剤の作用により、食欲が大きく低下することが多く、結果として1日の摂取カロリーが16~39%も減ることが知られています。そのため、限られた食事の中で栄養バランスを確保することが非常に重要です。
以下は、マンジャロ治療中に推奨される食品群です。
推奨食品カテゴリ | 具体例 |
---|---|
野菜・果物 | ブロッコリー、トマト、にんじん、ほうれん草、りんご、バナナ |
良質なタンパク源 | 魚、鶏肉、豆腐、納豆、ゆで卵、ギリシャヨーグルト |
全粒穀物 | 玄米、もち麦、オートミール、全粒パン |
良質な脂質 | オリーブオイル、アボカド、ナッツ類(無塩) |
発酵食品 | ヨーグルト、キムチ、味噌汁(塩分控えめ) |
◆控えたい食品・食習慣
マンジャロ使用中は、下記のような食品や食べ方を避けることで、消化器症状(吐き気・便秘・下痢)やリバウンドのリスクを減らすことができます。
-
脂っこい揚げ物(特に空腹時)
-
甘いスイーツやジュース類(高血糖+脂肪蓄積の原因)
-
食品添加物が多いコンビニ弁当やインスタント食品
-
お酒(胃腸障害や低血糖のリスクを高めます)
-
「食べないダイエット」(筋肉量が減り、代謝が落ちます)
また、「長時間の空腹→ドカ食い」は、胃腸に負担をかけるだけでなく、血糖値スパイクや再びの空腹感を引き起こすため注意が必要です。
◆おすすめの食べ方・タイミング
食事内容だけでなく、「どう食べるか」もマンジャロ治療の成功に直結します。
● 小分け食(1日3~5食)
1回の食事量を減らし、3~4時間ごとに小分けで食べることで、消化器への負担を軽減しながら安定したエネルギー供給が可能になります。
● タンパク質ファースト
最初にタンパク質を摂ることで満腹中枢が刺激され、血糖値の上昇を緩やかにしつつ筋肉の維持に貢献します。
● 水分補給を意識
便秘や脱水症状を防ぐためにも、1日1.5~2Lの水分摂取を目標にしましょう。カフェインを含まないハーブティーや白湯もおすすめです。
◆食欲がないときの工夫
「そもそも食べる気が起きない」という患者様も少なくありません。そのような場合には、低ボリュームでも高栄養な食材を選びましょう。
-
スムージー(プロテイン+ほうれん草+バナナ+無調整豆乳)
-
ギリシャヨーグルト+はちみつ+ナッツ
-
味噌汁+豆腐+野菜+卵
-
高タンパクスープ(鶏むね肉・豆・押し麦など)
また、食事リマインダーをスマホで設定して「空腹でないけど食べる」習慣をサポートするのも一つの手段です。
◆まとめ
GLP-1製剤「マンジャロ」は、単なる“やせ薬”ではなく、「体質を根本から改善するための治療薬」です。そして、その効果を最大限に発揮するには、日々の食事の質とタイミングが何よりも重要です。
食べる量が減っても、しっかりと栄養をとる。これは一人では難しいことかもしれません。当院では、医師・栄養士・運動指導士が連携して「患者様に合わせた痩身プラン」をご提案しています。ぜひ一度ご相談ください。