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GLP-1受容体作動薬の登場により、医療ダイエットは新たなステージへと進化しました。中でも、GLP-1とGIPの二重作動薬である「マンジャロ(tirzepatide)」は、これまでにない体重減少効果が確認されており、肥満治療の革命的選択肢として世界中で注目されています。
しかし、その効果を十分に得るには、薬に「頼る」のではなく「活かす」という視点が必要です。つまり、マンジャロの力を最大限に引き出すには「食事療法」との併用が欠かせません。
この記事では、最新の米国医学アドバイザリーレポート(Mozaffarian et al., 2025)をもとに、GLP-1治療と食生活の関係について詳しく解説します。
◆マンジャロの効果はどれくらい?期待される体重減少とは
マンジャロは、1週間に1回の注射で、平均15〜20%の体重減少が見込まれる強力なGLP-1系薬剤です。臨床試験「SURMOUNT-1」では、最も高用量群(15mg/週)で20.9%もの減量が報告されています.
特に糖尿病を合併しない肥満症例においては、従来の薬剤を大きく上回る減量効果が示されており、肥満による心血管疾患、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などの改善も報告されています。
◆「薬だけ」では長期成功しない?治療の落とし穴
これほど効果的な薬であっても、「薬だけ」に頼っていると次のような問題が起こります。
① 副作用(特に消化器症状)
マンジャロでは、吐き気、便秘、下痢などの消化器症状が頻発します。実際、最大44%の人に吐き気が出現し、その不快感から中止に至るケースも少なくありません。
② 栄養不足・筋肉量の減少
マンジャロでは食欲が著しく減退し、摂取カロリーが20〜40%近く減ることもあります。この状態で栄養管理を怠ると、鉄・亜鉛・ビタミンB群などが不足し、疲労感・脱毛・貧血などの不調が現れる恐れがあります。
さらに、筋肉量も減少しやすく、「痩せたけど体力が落ちた」「代謝が下がってリバウンドしやすい」といった状態に陥りやすくなります。
③ 中止後のリバウンド
マンジャロをやめると、多くの患者で半年〜1年以内に体重が再増加する傾向があります。ある研究では、中止後に失った体重の約3分の2が戻ったという報告もあります。
◆食事療法の併用が、治療のカギを握る理由
マンジャロの副作用やリバウンドのリスクを抑え、「健康的に、かつ持続的に」痩せるために不可欠なのが、科学的根拠に基づいた食事療法です。
具体的には、以下のような効果が期待できます:
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副作用の軽減: 消化器症状に配慮した食事(小分け食・消化の良いもの)で、吐き気や便秘のリスクを下げる。
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栄養の最適化: 少量でも高栄養の食品を取り入れ、ビタミン・ミネラル・タンパク質の不足を予防。
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筋肉維持: 運動と高タンパク食を組み合わせることで、筋肉を守り基礎代謝を維持。
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満足感のある食事: 食事制限によるストレスや“食への渇望”を防ぎ、メンタルの安定にも寄与。
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中止後の体重維持: “薬がなくても続けられる”食習慣を確立しておくことで、リバウンドを防ぐ。
◆当院が提供する「医師×栄養士」チーム医療
当院では、マンジャロによる痩身治療を行う際、管理栄養士による個別栄養指導、体成分測定(InBodyやDXA)などを組み合わせた総合的なサポートを提供しています。
「ただ痩せる」のではなく、「健康的に痩せて、維持する」ことがゴールです。
◆まとめ:マンジャロ成功のカギは“食事との掛け算”
マンジャロは、確かに医学的に裏付けられた強力な痩身薬です。しかし、薬を飲むだけ・打つだけでは、長期的な成功は望めません。本当の勝負は、“どんな食事と生活習慣を選ぶか”にかかっているのです。
次回のブログでは、マンジャロ中におすすめの具体的な食事内容や、よくある食欲不振・消化器症状への対応法を詳しく紹介します。
ぜひあわせてご覧ください。